10 - 煤けた太陽
「これ立憲民主党批判だよね」
『でしょうね』
「ええと、私も批判してごめんなさいなんだけど、ちゃんと対策も出すので許してください。で、なんであんなに頭がいい人たちなのに、私でも雑だってわかるくらい経済政策が雑なんだろうってずっと不思議だったんだけど」
『そうなんですか?』
「なーんかぼんやりしてて、財源は再分配とか、ムダな公共事業減らすとか、今はもう言ってないけど埋蔵金とか」
『あー、埋蔵金って言ってましたね』
「あと増税」
『…はい』
「なんかやります、ってことはわかる。でも、税の累進性強化って表現にしても、少なくとも『消費税導入前の税制に戻す』とか、試算が出せたりシミュレーションできたりする内容じゃないと、言ってることの検証もできないし」
『少し落ち着きましょ』
「ごめん。で、ちょっと話は変わるんだけど、最近ね、西田昌司 議員の動画観たんだよ」
『誰ですかその人』
「靖国大好き」
『あー、そういう人なんですね。なんで観たんですか』
「現代貨幣理論の話してたから。で、経済の仕組みとか政策とか、びっくりするほどしっかり話してた。ほんとにすごいよ。あ、その話なら知ってますー、じゃなくて、論理が見事に血肉になってます。でね、なんでこれだけちゃんとした人なのに歪な歴史観なんだろうと思ってたんだけど、この人、税理士だったんだよ」
『はあ』
「税理士だから数字の解釈にはめっぽう強い。けど歴史や法律のプロじゃない。だから見かけは良くても人の権利や自由をないがしろにする理屈を受け入れる隙ができてしまう」
『そうか。なるほど』
「逆に立憲民主党の枝野代表とか今回の選挙で与党を猛追した小田切達、あとこの動画でボコボコにされた明石順平は 3 人とも弁護士だった。こっちは人の権利がどれほど大切か知ってるから、政治の不正とか労働問題とかを鋭く追及できるけど、数字には弱いから経済政策が雑になる」
『あー、そういうことですか』
「こういうことがあるから、私は経済の勉強するときに、著者が経済学の博士か、どこで学位をとったのかをまず調べた。権威主義だけど、プロじゃない人の知識は信用できないからです。世の中には最瀕値と中央値の区別もつかない人が統計学の本書いたりしてるので。私は無知だから偏った知識を入れると汚染される」
『でもこの動画の人は博士じゃないですよね。何で観たんですか?』
「だって太郎が出てるから…」
『…』
「まあ、そんなわけで、互いに不足している知識を認めて、勉強しあえば完璧に近づく!はず」
「太郎の政党は財政出動で盛り上げようとしてるらしいんだけど、どう思う?」
『どうなんでしょうね』
C202SA の調子がひときわ低くなった。
『今は買おうとする人がいませんからね。国内では儲かりません。海外で儲けた分を日本に持ってきてる感じですし』
太郎が街頭演説で言ったやつだ。 経済産業省の調査 で、企業が海外に移転する理由は節税 (8%) じゃない。需要を求めて (68.6%) だ。
『国内でもういっぺん消費を盛り上げるのは無理でしょうね。まあ、1 億 2000 万人が 8000 万人くらいになったときに、どうするか考えたらいいんじゃないですか?』
悲しい予測だった。商売人はもはやこの国への興味を失った。そんなふうに思えた。バブルが崩壊してからの 30 年で、遠い未来までの道が整備されてしまったのだ。
太陽の光が煤けている。
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